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本と酒と怠惰

二五

"亡くなった人のぶんまで幸せになりなさい。生きていきなさい。"

これほどまでの詭弁があるだろうか。

亡くなった者は、亡くなった者の生を生きたかったはずだ。それを肩代わりすることなど、できっこないのでは?では、今を生きる私にできることはなんなのだろうか。

忘れないことだ。

確かに、あの人が存在した。その事実を忘れないこと。細かなやりとりは忘れてしまっても、存在を忘れないこと。それが一番の弔いになるのではなかろうか。

先日の記事に書いた、魂の双子のよな友人。

なにがきっかけで付き合いを始めたのか。なにを話したのか。どこで、どう過ごしたのか。随分と忘れてしまっている。墓石の冷たい感触だけが確かだ。けれども、あの子がこの世に短い時間でも存在したこと。それを忘れてはならない、と感じる。あの子のために生きるのとは、また、違う。忘れない。ただ、その一点においてのみ、私はあの子に少しでも貢献できているような気がする。

もっと、もっとしてあげたいこと、一緒にやりたかったことはある。後悔は尽きない。しかし、後悔の渦中に留まっていては、今度は私の生が止まってしまう。だから、忘れない。それだけでいいのだ。

これからも、たくさんの人を亡くすだろう。一人一人を覚えていられる自信など、ない。けれども、忘れない努力を、私はしていきたい。